再会、再会。

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入口横の喫煙所で、驚いた表情の柳井さんが煙草に火をつけていた。 『やっぱりそうだ。驚いたな。こんなとこでこんな時間に一人で危ないよ、澄香ちゃん。』 柳井さんの声はどうしてこんなにも、私の中にすっと入ってくるんだろう。 それにしたって驚いたのはこっちだ。 急に速くなった鼓動を深呼吸で落ち着かせ、冷静を装って答えた。 『10代の女の子じゃあるまいし、危ないことなんてないですよ。柳井さんこそこんなとこでこんな時間にどうしたんですか?』 『このホテルはよく使うんだ。お偉いさんたちはこうゆうところが好きだからね。』 微笑んでから最後の一口を吸って、ゆっくりと吐き出した。 柳井さんが、大切な人がいるのにこんなところで悪いことするような人だったら良かったのに。 そう思ったら、私がひどく汚いものに思えた。 煙草を消す姿を眺めながら、咄嗟に言葉が出てきた。 『柳井さん、お酒ご馳走してくれませんか?』
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