再会、再会。

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大人の女性として扱われることが多くなった私でも、少し緊張するようなbarに入った。 柳井さんは通い慣れた店なのか、一番奥のボックス席に私を案内してくれた。 『なにか、軽めのお酒を彼女に。僕はいつもので。』 スマートな対応に大人の色気を感じつつも、何を話したらいいのかとドキドキしていた。 『僕、周りからはどう見られてるんだろうな。こんな時間に若くて可愛い子を連れてこんなところに来てさ。』 お世辞だと分かっていても、可愛い子って言われたことが嬉しい。 男の人といて、こんなに頭を使って話をしたことはあっただろうか。 いつも何気ない、意味のない会話ばかりだったから…。 しばらく当たり障りない話をした。 ふと煙草を持つ腕の時計を盗み見ると、午前3時を回ろうとしていた。 お酒も無くなってきて、これを飲んだら別れを切り出されそうだった。 この人は覚えているのだろうか。 『沖縄で会いましたよね?』 空気が一瞬で変わるのが分かった。 暖かくて包み込まれるような空気が、急にずんと沈んだような気がした。
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