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殴りたかった
卑屈な笑いをする先輩を
喧嘩なんて縁の無かった俺でも、どうにか出来るんじゃ無いかと錯覚するほどに、煮えくり返り拳を握る‥
今なら勝てそうな気がした。
俺よりデカイその頭を‥
卑怯な頭をかち割ってやれば少しはましになるんじゃないかって思った。
それなのに、久野さんの顔が浮かんだ‥
無防備に眠る姿を思いだし恐怖した‥
ずんずんと楽しそうに風を切って会社に向かう赤井先輩の後ろ姿に、ただ‥
溜め息を吐いて、震えた手を握り会わせ抑えた。
赤井先輩は久野さんよりも年下‥
仕事の出来る久野さんに憧れを抱く人と同じだけ、嫉妬や妬みも抱く‥
俺はいい、
でも‥もし、久野さんの名前が出たら?
会社での立場が悪くなったら?
居づらくなったら?
どのみち、一時だけの事なのに
俺のせいで、久野さんのあんな姿を奪うような真似は出来ない‥
大丈夫。
きっと、あの人も忘れる
ちょっとした悪戯心でからかって弄ぶだけ‥
黙り混む。
俺は大丈夫。
別に、何も失う物なんてないから‥
そうやって、理解してるのに
いつまでもぞわぞわと嫌な気持ちしか湧いてこなくて‥震えが止まらなかった‥
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