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結局、日曜日の夜も眠れず、ふらふらになりながら
会社に向かった‥
あの日のスーツはクリーニングにも出せず、クローゼットにしまいこんだ
携帯に入っている筈もない番号を探したりする自分に疲れてきた
久野さん、俺、あなたの事をなにも知らない‥
会社につく前、
ビルを見上げ、目眩でぐらついた身体‥
「お、危ないっ‥」
引き止められたその手が久野さんじゃないかと期待する……
「おはようございます‥ 」
そんな期待を裏切ったのは、俺からあの日、帰る手段を奪った張本人‥赤井先輩だった。
「大丈夫なのかぁ?」
「まぁ、はぃ‥」
あんたが居なければこんな風にはなってなかった……
心が荒む。
赤井先輩が前を歩く‥
少し秤の距離を取った俺
「久野‥」
赤井先輩が溢した台詞を俺は聞き取り、ビクリと、肩が跳ねるのが自分でも解るほど動揺した‥
「くっ、くく‥」
斜め前を見上げる
振り返り、口に当てた手をゆっくり下げたのは本物の悪魔‥
「正直だな、お前‥」
「ぁ‥ ……」
震えた。
もやもやした頭を鈍器で殴られたみたいな衝撃‥
赤井先輩が、言う。
「今日から、また久野は居ないんだってよ‥ 寂しいだろ?」
馴れ馴れしく肩に腕を乗せて、嫌らしく笑う‥
「く、くく‥
久野も趣味が良いな……」
こんなにも、残酷な人が居るもんなのか‥
ただ、普通に生きてきた人生で、初めて心から引いた‥
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