第一話 蜃気楼

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(ウソでしょ) その言葉が出そうになった。 「私はS役です。Sは甘えるMの指示に従うだけ。 いままで亜紀さんはSが虐め、それに耐えるMと 思われていたでしょうが、それは間違いです」 その日は9時半まで、客が来なかった。 亜紀はマスターから写真の説明を受けながら、 何枚も、何枚も眺めた。 いろんな器具を使って、友香里を苦しめていた。 どれも、素晴らしい写真だった。 亜紀は感激と興奮を覚えて、 幾度もゴクリと唾を飲み込んだ。 「亜紀さん、薄いハイボールにしましょう」 「どうしてですか?」 「心と身体を鎮(しず)めるには、それがお勧めです」
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