第一話 蜃気楼

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亜紀は友香里と『蜃気楼』に幾度か通った。 40代のマスターはいつでも笑顔で迎えてくれた。 店に来る時間が早いこともあり。 客は亜紀と友香里だけの日が多かった。 カウンターを挟んでの三人の会話は楽しかった。 マスターはボキャブラリーが豊富で笑わせ上手。 どんな話をしても笑顔になれた。 亜紀もいつのまにかマスターと気軽に話すようになり。 それが彼女の癒しになっていた。 「ほんと、良いお店ね」 友香里に真顔でそう告げると。 「でしょ」 友香里が笑って応えてから、 マスターにチラリと視線を送った。 それに気付きマスターも笑顔になった。
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