第一話 蜃気楼

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夫と二人で住む友香里は、 夜、自由になれる日はそう多くはなかった。 亜紀は『蜃気楼』へ一人で通うようになる。 亜紀とマスターが二人だけになる日もあった。 その何度目かの夜に、 亜紀は気になっていたことを マスターに尋(たず)ねた。 「友香里が『マスターと仲良くなると、楽しいわよ』 って話していたけど、それって?」 「そんなこと仰(おっしゃ)っていたのですか」 と口にして、マスターはニコッと笑みをつくった。 なぜマスターが微笑むのか、 その理由はわからなかった。けれども、 マスターは嬉しそうにしている。 その笑顔にひかれて亜紀は小さく笑った。
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