第一話 蜃気楼

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『なんで? どうして?』 そう訊きたかったが、言葉を飲み込んでしまった。 「驚いているようですね?」 「・・・」 亜紀はただ頷いた。 「無理もないですよ。 親友が裸で吊らされている絵を見たら、 当然、そうなります」 とマスターが笑った。 耳に優しい笑い声だった。 甲(かん)高くも低くもない。 抱擁するような笑い方だった。 マスターが話す間、彼を見ていた亜紀は、 すぐパソコンへ目を戻した。
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