第一話 蜃気楼

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三角のマチで囲まれた、ひざ丈のフレア・スカート。 カットソーの上にボタンダウンのシャツ。 今夜の亜紀は普段よりも大人しい。 だが大胆な隠しごとが一つある。 彼女は今夜。 ゆるやかに揺れるスカートの下には、 なにも着けていない。 日が落ちると、きらびやかになるテナントビル。 エントランスから真っすぐに伸びる階段。 安原亜紀は広がりたがるスカートを気にして。 一段一段上っていく。 後ろでボソボソと男性の話し声。 亜紀は振り返らずに進む。 覗かれてはいないだろう。 そう信じて。
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