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真っ赤なロープが肌に喰い込んでいる。
片足は上に持ち上げられ。
両手は何重にも縛られ、引っ張り上げられていた。
友香里の表情は虚(うつ)ろ。瞳には力がなかった。
「誤解しないでくださいね。ただの遊びですから」
マスターが話したその言葉。
それは『縛ったのは私』と語っているのと同じだ。
異様な告白をしているのにマスターの口調は自然だった。
秘密や内緒話ではなく。
何気ない日常の出来事を話す感じだ。
声質もトーンも声量もいつも通り。
亜紀は写真を目にして、心臓が躍っていた。
けれど、優しく柔らかく話すマスターの声を耳にして、
激しい鼓動が少し和(やわ)らいだ。
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