第一話 蜃気楼

4/41
前へ
/41ページ
次へ
ゾクッと背中が騒いだ。 スカートの奥を見られたわけでもないのに、 亜紀に恥ずかしさがわく。 マスターはカップルに頭を下げ。 それまでの微笑みをリセットして、 目を細めて亜紀へ近づいてくる。 客のスペースよりも幅があるカウンターの内側。 中央に鎮座(ちんざ)するブック・スタンド。 そこに何冊かのメニューがある。右端の一枚を取り。 マスターが亜紀の正面に来た。 「いらっしゃいませ」 「こんばんは」 「いつもので、よろしいですか?」 「ええ」
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

413人が本棚に入れています
本棚に追加