第一話 蜃気楼

5/41
前へ
/41ページ
次へ
亜紀が右奥にいるカップルをチラリと見た。 「お知り合いですか?」 「いいえ」 マスターに訊(き)かれ、亜紀はそう答えた。 亜紀の前にメニューが置かれた。 マスターは右奥にある冷蔵庫から コロナ・ビールを取り出し、 シャンパン・グラスを持って戻ってくる。 グラスが温まらないようにツルの根元を掴み。 亜紀の手元に置いた。ビールの栓を外し。 グラスに注ぐ。 「ありがとう」 「つまみは何にしますか?」 マスターがメニューを取って、亜紀に広げて見せた。 真ん中に付箋(ふせん)が貼ってある。そこには。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

413人が本棚に入れています
本棚に追加