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◇◇◇◇◇2年A組 菅原 剴
シャワーを全開にして浴びれば流れ落ちる水が赤くて、どんだけ出たんだとちょっと引いた。それでもすぐに色もなくなり、時々ピリッと傷が痛む程度で大したことはないらしい。
久しぶりに大勢を相手にして、勝ちはしたもののこんなに負傷するとは思わなかった。まぁ、腹が減ってたってのもあるんだが…。
少し、鈍ったか?
腕に力を入れれば立派に盛り上がる上腕二頭筋に、足りねぇな…と、舌打ちして風呂を出る。無意識にバスタオルに手を伸ばして、ふと思い出した。
確か…、最後に部屋に帰って来たときは黒いマリモがいた。見えてるのか不思議なくらいのデカイ眼鏡でやたらと友達だの親友だのと煩くて、今日から同室になった!!と聞いたその日から帰って来てなかったのだが…。
ガシガシと頭を拭きながらバスルームを出たら、ヘラヘラ笑った不審者が鍋をかき回していた。
「サッパリ出来た?ゴメン、まだご飯炊けてないんだけど…。カレー食べれるー?」
もう少し待っててね♪とウィンクして、俺の額に手を伸ばす。呆気に取られてれば何かを貼られ嬉しそうにソイツが笑う。
「良かったー。あんまり切れて無かったよ!俺、スゴイ真っ赤でビビっちゃってさー。実はさっきもずっと血だらけで食べさせちゃってたんだよねー。」
ゴメンね、と謝るコイツに違和感しかない。ピーと鳴った電子音は炊飯器で、炊き上がりを知らせているらしい。
「ホントはもっと煮込めば美味しいと思うんだけど、ちゃんと火は通ってるから大丈夫…だよー…。でもその前にーーー
何か…着て、きたら?」
真っ裸だったのを、すっかり忘れていた。
「俺?俺はー、本田英智。君は『スガワラガイ』君で合ってるんだよね?よろしくー。」
バスタオルを腰に巻いただけの格好の俺に、向かい合ってカレーを食ってるソイツがヘラりと手を伸ばして。無視したまま食い続ければまた笑ってやっと手が戻っていった。
「転校してきてもうすぐ一ヶ月で、やっと友達も出来始めたトコでねー。同じA組なんだよ。空いてる席がそうなら結構近い席でさー…、」
「うるせぇ…。」
さっきまで、無言だったくせに今度はよく喋る。黙れと睨めば静かにはなったものの、ヘラヘラとした顔が煩いほどにウザかった。
無言で食い終わって部屋に入ろうとしたところで遠慮がちに声を掛けられる。
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