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3時限目、古文で担任の裕ちゃんが俺の顔見るなりフフンと口角を上げて見下ろしてくる。
「おい、英智。そんな熱っぽい目で教師誘って、どうされたいんだよ?」
スルリと頬を撫でた手がピタッと止まって、なぁに?と首を傾げた俺に近づいて来た裕ちゃんの…、おでことおでこがくっつく。途端にキャーとかギャーとか騒がしくなった周りを一喝して、正面十数センチのトコで裕ちゃんが一言。
「帰れ、英智。お前熱あんぞ。」
「へ?熱、あんの?俺…。」
そう言えば朝からダルかったなー、とか寒気がするかも…、なんて気がしてきて。ポヤンと見上げた顔が心配そうに眉を寄せる。
「一人じゃ帰れねぇなら、送ってやっか?」
「裕ちゃーん…?センセのお仕事は古文を教えることー。俺は、一人で帰れますー。」
次々と名乗り出る付き添いを断って、さっさとバッグを持って教室を出る。広すぎる校舎にウンザリしながらなんとか靴を履き替えて、寮までの一直線の通学路を一人歩く。さっきまでなんともなかったのに、熱があると思うと途端に心が弱くなってしまう。
保健室でちょっと寝てくればよかったかなぁ?なんかフラフラするー…。あ、風紀に連絡、しとかないと…。
覚束ない足取りで部屋に何もなかったのを思い出して…。菅原君の夕飯と…、薬も買わなきゃ…とかぼんやり考えながら。気付いたら部屋の前まで来ちゃってて、中に入っちゃったらもう…スイッチが切れたみたいにその場にしゃがみこんで動けなくなってしまった。
耳元で何か話しかけられる声に、重いまぶたを少しだけ開けば銀色の…
「す、がわら君…。お腹、すいた、の…?少し休ん、だら…買いに…。」
「----------!!---!?」
聞こえているのに内容なんか全然分からないし、左右に大きく揺すぶられて頭がガンガンするし。だから、後でちゃんと、買ってくるから、さ…。
「ごめ……ねぇ。今日なに、食べた、い…?」
なんとか笑顔を作って、ポンポンと目の前の銀色を撫でる。あれ……?このフワフワってばポン助(ポメラニアン♀・実家住み)じゃん。俺いつの間に実家に帰って来てたんだっけ?
嬉しくなってギューって抱き締めればまた耳元が煩くなって、淋しかった?となだめる様によしよし撫でる。じんわり伝わる暖かさになんだか涙が出ちゃうよ…。
「ずっと一緒、だから…ね。」
そっと囁いたら…、抱き締め返してくれた。そんな気がした…。
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