第2章 そもそもどこで間違えたんだろ? 

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◇◇◇◇◇2年A組担任 古文 石川裕次郎 「お、待たせ…。購買混んでて、遅くなっちゃった。」 勢いよく開いた扉と裏腹に、入ってきたコイツはヨレヨレの姿でソファに向かうとそのまま倒れるようにダイブした。確かに教室から此処まで距離はあるが障害物なんてなかったはずだが…。 「急いできたのは誉めてやるが、随分ボロボロじゃねぇか?」 覗き込んで跳ね返った髪を直すように撫でてやればソファに埋まった顔をずらしてユルリと笑う。 「みーちゃんに捕まっちゃってタイムロスしてたら購買スゴい人で揉みくちゃだったよー…。あちこち引っ張られたし、購買ってどこでも変わらないねぇー。」 シャツは引っ張り出されてるし、ベルトは外されかけている。本人は満員電車みたいだったよ、なんて言ってるが…、どう見てもそこで痴漢されてきてるじゃねぇか!! 「あー、お腹空いたぁ。裕ちゃん、お昼食べた?良かったらこれ、どう?美味しいですよって、譲ってもらったんだよー!」 漸く起き上がって、ペリペリと包装を外して渡してきたのはサーモンクリームチーズサンド。淹れたてのコーヒーと交換したそれを一口かじれば薫製のされたサーモンとチーズの塩気が絶妙で、コーヒーにもよく合う。 「んー、美味しいねぇ。知らない子だったけど今度会ったらちゃんとお礼言わなきゃねー。」 サンドイッチにかじりついてニコニコと笑顔を見せるコイツにさらっと聞いてみる。 「英智…。もうすぐココ来て一ヶ月だが、どうだ?慣れたか?」 何の事か分からずキョトンとして、でも意味を理解すればタレ目を細くして微笑む。 「ふふ、ありがとね。最初はいろいろあったけど…、それでも皆優しくしてくれるし… 裕ちゃんだって、こうやって気に掛けてくれてるでしょ?こういうのって結構俺を支えてくれてるんですよ、センセ?」 だらしなく頬を緩ませたコイツを可愛いと思いつつ…不安にもなる。外見から想像出来るほど中身がユルいコイツは転校早々やらかした事件で学園内を騒然とさせた。どうってことない事でも、相手が悪過ぎたよな…。 分かってるのかいないんだか、ただニコニコと笑ってても案外そうじゃないとこもあって、 「バぁーカ。だったら古文が1限の時も遅刻すんなよ。他は…、適当にやっときゃいいぞ。」 「なーにーそーれー。生徒にそんなこと言っていいのー?ちょっと裕ちゃんのこと尊敬したのに、まったく。」
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