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だからさ、さっきの流れで俺…ちょっとカッコいいこと言っちゃった手前ね、すぐにお世話になっちゃうのってどうかとっていうか…なんていうか。
部屋の玄関に、血まみれの人が倒れてても…、って!?さすがにコレはマズイでしょ!?恐る恐る顔を覗き込めばその顔が真っ赤で!俺は真っ青になって固まってしまう。
「きゅ、救急車ー!?え、謙蔵さんに?誰に言った方がいいの!!?
てか、生きて…る、よね…?」
そう言いつつも半ば死亡決定で、震えながら外に出ようとした足首を何かが掴んで…、掴んで!!?
「ーーー…腹、減った…。」
遺言がそんなんじゃ泣くに泣けないじゃん…。
「おい、もっと何かねぇのかよ?」
その食べっぷりが見事で呆然と眺めていたら眉間にしわ寄せて重低音で唸った狼が睨んできた。
「もうないよー。コレが最後だって言ったじゃん?だから買ってくるよって言ったのに…。」
すでにテーブルの上は空いた皿やカップ麺の容器でいっぱいなのに、もっとと言われても今夜の夕飯からストック、非常食に至るまで食べ物ならなんでもいいと出し尽くしてしまって本当に何もない。
「クソッ。」
吐き捨てる言葉と舌打ちに悲しい気持ちになっていたら、箸を置いて立ち上がって。そのままスタスタと部屋を出て行って、ガチャリとバスルームのドアが閉まる音が聞こえた。
「…うん。もうちょっと、頑張ってみる。かなー…?」
財布を持って部屋を出た俺は、近くの非常階段から1階へと向かった。謙蔵さんを、避けたわけでは…ないよ、決して。
帰りにうっかりエレベーターで戻ってしまって、謙蔵さんのいる寮監室の前をダッシュした俺。やっぱりちょっと後ろめたいんだよね…。
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