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え、てか次の駅ってわたしが降りるとこじゃないか。ハァ……もうちょっとうさぎ、見ていたかったのになぁ。というより、彼がいったいどこで降りるのか気になる……。
「おや、……ざわさんじゃないですか」
ふと、おっさん型うさぎに話しかけてくる頭の寂しいおっさんがいた。え? なんだって? なにざわだって? よく聞き取れない。
「おや、石井くんじゃないか。その節はどうも」
うさぎ、もとい何とかざわさんが朗らかに返す。いや、その節が何なのか気になって仕方ないのはわたしだけだろうか。
「いえいえ、こちらこそどうも。ところで……ざわさん」
あぁ、くそ。聞き取れない!
「石井くんと私の仲じゃないか。愛称で呼んでくれたまえ」
どういう仲だよ。いかん。彼の本名と石井くんとの関係が気になって仕方ない。
「そうだね、じゃあ、みみざわさんでいいですかね?」
「ああ、かまわない」
愛称がみみざわさんてどういうことだよ。本名知らないけどたぶんあまり変化がないってことだけ、はっきり伝わるぞおい。
そうこうしているうちに、電車は止まった。あ、ヤバい。降りなきゃ。くそう、とにかく今日は、みみざわさんの正体と石井くんとの関係が気になりすぎて、仕事が手につかなそうだ。
今日の観察結果……
・うさぎにおびえる少年、憐れ
・みみざわさん登場。新生物?
・ズレてる主婦
・本名=……ざわさん
・あだ名=みみざわさん
・頭の薄い石井くん
・みみざわさんと石井くんの間に何があったのか
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