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「さてと……全員に注射が終わったところで、本題に入ることにしよう」
吉池がニヤリと微笑む。注射をされた五人は、いったい何が始まるのか分からない恐怖で、全員生唾を飲みこんだ。
「みなさんもご存知の通り、今やアメリカ合衆国は非常に危険な状態にある。このままの状況が続けば、後十年もすれば国自体が破綻し、他国にその実権を握られることになるだろう」
吉池が全員の顔を見回す。
「そうなると同盟国である我が国にも、未曽有の危機が訪れよう。ロシア、中国といった国が、本国を狙ってくるのは、間違いない」
「しかし総理」
また口を挟みかけた林田の目の前に、若い兵士の銃口が突きつけられる。
「まぁ、聞きなさい。林田くん」
「は、はぁ……」
「同盟国を失った我々は、自分たちの力で祖国を守らねばならなくなるだろう。しかし百年以上前から少子化を止められなかった我が国の人口では、単純計算で人口を割ると、国民一人当たりが四十人の中国人と戦わねばならないのだ。もちろんそれは中国に対してだけであって、ロシアや北朝鮮だって黙ってはいまい」
「それはまぁ……そうでしょうけど……」
林田は頷いた。
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