17人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱりここにいた」
丁度、頭上で足音が止まり、影を作った。
「・・・ユズキ」
きっちりと編まれたおさげ頭が微笑みながら、俺を見下ろしていた。幼馴染みの坂下ユズキだ。
「優等生が・・・サボっていいのかよ」
むくりと起き上がり、ベンチの上にあぐらをかくと、ユズキははいとカフェオレの缶を俺に差し出した。温かい缶を彼女の手から受け取ると、彼女は微笑んで俺の隣に座った。学生カバンを傍らに置き、スカートを直す。着ていたコートのポケットから自分の分のミルクティーを取り出した。
「時間見た?もう放課後だよ。問題児のキンジくん」
プルタブを開けるのに手こずっているようなので、貸せよと缶を受け取り、プルタブを押し開けた。空いた缶をユズキに渡すと、「ありがとう」と笑顔を見せた。
暫らく無言のまま、缶を口に運ぶ。どこらか風が吹いてきて、ガサガサと足元の落ち葉をさらっていった。
「またケンカしたの?」
悲しそうにユズキが訊ねる。
「あぁ・・・これか?」
俺は学ランの袖で口元を拭った。ぴりっと痛みが走り、思わず顔をしかめる。
最初のコメントを投稿しよう!