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「オウスケが待ってるから」
その名前を出すのは卑怯だと解っていたけれど、俺は振り返り、ぼそりと呟いた。ユズキの頬が赤みを増していく。「でも・・・」と戸惑うユズキの声を無視して、俺はその場を去った。黄金色の落ち葉の絨毯を掻き分けながら。
公園を出るとすぐに、オウスケに電話を掛けた。何度目かのコールの後、本人が出た。雑踏と、周りを警戒しているのかボソボソと小声で話すオウスケは、今いる場所と行き方を簡単に述べ、15分後に落合おうと約束をして電話を切った。
オウスケの声がいつになく緊張していた。切羽詰っているのかもしれなかった。とりあえずケータイは再びズボンのポケットに仕舞い、指示された場所へと向かう。
土浦キンジ、17歳。蒲公英(かばこうえい)高校、通称、蒲高(かばこう)に通う3年。っていってもほとんど学校に行ってないし、登校しても教室に入ることはない。ましてや授業を受けるなんて論外だ。
俺の住むこの地域の高校はガラが悪いことで有名で、俺の通う蒲高はその中でもトップレベルの悪さだ。「雷音(ライオン)」と呼ばれるヤンキーのグループがこの学校を牛耳っていて、俺はそのグループのサブリーダーを務めている。
雷音には対抗する他校のグループがある。同じ学区内にある銀蘭(ぎんらん)高校の「王★KID(オーキッド)=通称・KID」と呼ばれるグループで、ことある事に衝突しているのだ。
今日の午前中も街中を歩いていたら、いきなり後ろから殴られ、人気のない裏路地に引きずり込まれた。KIDのパシリの奴らだった。頭も悪いし、全員ヘタレだった。
1人で5人を相手に殴り合いのケンカをし、漫画のように奴らをピラミッド型に重ねてやった。運悪く1発殴られて、口の端を切ったが、まぁ奴らのやられ方を見れば、どちらが強いかは一目瞭然だろう。
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