three love

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◆◆◆ 弘樹、拓人、佳乃。この三人が中学三年生の頃。受験生にも関わらず、受験生の意識を持っていなかったとき、五月の中旬。 中学校でも三人はモテた。毎日の告白は耐えなかった。美形三人組で幼馴染み。高校と同じく、全校生徒が三人のことを知っていた。 弘樹は人前ではあまり表情を変えず、笑うこともまともに話すことも、二人の前が殆どだったが、高校と同様に美形な弘樹は高嶺の花として扱われていた。 拓人は少しちゃらいが後輩から慕われていて、スポーツマンでありリーダーシップだった。 佳乃は可愛いとマスコットのように男子からも女子からも愛されていた。 だが、ある事件により、三人の関係は少し曲がった。それは、良い方になのか、悪い方になのか──他人からすれば、歪な方向に。 「俺、彼女出来た」 弘樹のこの一言で二人は足を止めた。二人が止まることにより、弘樹も足を止めた。 いつも通り、弘樹と拓人と佳乃の三人で下校中のことだ。 「竹野さんっていただろ? あの人と。二人には言っておこうと思って」 「竹野さんって良く弘樹と話してた子?」 「うん。あの人となら好きになれるかなーって。……どうした? 拓人」 俯いている拓人は弘樹の呼びかけに顔を上げた。弘樹は気付いていないが、横にいる佳乃は悲しく苦しそうに眉を寄せている。 「弘樹、俺……弘樹が好きだ」 「俺も拓人が好きだけど、急に何?」 首を傾げて弘樹は問うた。 佳乃は首を横に振り、それ以上言うなと示す。だが、拓人は続ける為に口を開いた。 「恋愛感情で、弘樹が好きだ」 「え……何言って──」 「俺たち中三だろ。高校だって同じになれるか分からない。……三人との関係を壊したくなくて言えなかったけど、お前が竹野さんって人と本気みたいだから、思わず言っちまったよ」 拓人は弘樹の言葉を遮って、背を向けた。今度は覚悟を決めて佳乃が口を開いた。 「弘樹。僕も同じ。恋愛感情で弘樹が好きだよ。でも、この関係を壊したくなくて言えなかった。男同士なんて気持ち悪いでしょ。だから、僕たちはもう友達でいられない。ごめんね」 佳乃の言葉に、思わず弘樹は涙を流した。
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