第一章 ナイルの川岸で

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イシスは絹のように艶やかな漆黒のストレートの髪に、 この界隈では珍しいほど美しい白い肌を持ち、小さな顔の中には通った鼻筋と形のいい唇がバランスよく配置され、 何よりくっきりとした蒼い大きな瞳が印象的な町で評判の美女だった。 両親は生まれたばかりのイシスを見て、あまりに美しい赤子だった為、恐れ多くも女神『イシス』の名前をつけた程だった。 熱くなる友人達を前に、イシスは露骨に顔をしかめた。 「役人が勝手に決めたことでしょう?  困るわよ、第一、私、帰還祭に行くつもりないし」
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