第一章 ナイルの川岸で

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「あっ、大変」 慌てて手を伸ばしたとき、見知らぬ青年がスッとその洗濯物を手に取った。 「すみません、ありがとうございます」 イシスは顔を上げるなり、その青年の美しさに思わず息を飲んだ。 青年は旅人のような真っ白いフードつきの薄手のコートを着ていて、洗濯物を手にしたまま驚いたようにイシスを見ていた。 褐色の肌に金髪の巻き毛が光り輝き、吸い込まれそうな緑の瞳が印象的で、精悍に整った美しい顔立ちはまるで彫刻を思わせた。
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