第一章 ナイルの川岸で

21/71
前へ
/560ページ
次へ
彼はその緑色の瞳をアーチ状に細め、優雅に微笑した。 「――驚いた、こんな所に絶世の美女がいるなんて」 その言葉にイシスは思わず言葉を詰まらせた。 それは、こっちの台詞だわ。 こんな所に絶世の美青年が現れるなんて思わなかった。 イシスはそう思った後、気を引き締めるように唇を噛み、 『男というのはちょっと外見が良いとすぐさま歯の浮くような台詞を吐くんだから気をつけないと』 と言い聞かせ、心の動揺を隠すように軽く咳払いをして、 「洗濯物、取ってくださってありがとう」 と手を伸ばした。
/560ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5035人が本棚に入れています
本棚に追加