第一章 ナイルの川岸で

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――― ――――― ―――――――― 「たかが……たかが、ネフェルが帰って来ると言うだけで、この騒ぎは一体なんだと言うんですか!」 宮殿の東側。クフ王子の母であるヘレス第二王妃の部屋では火の点いたような騒ぎだった。 華やかで美しい第二王妃ヘレスはその美貌を歪ませる程にヒステリックな声を上げては、 大きな部屋の中をグルグルと円を描くように大股で歩き回っていた。 真っ赤な壁に、真っ赤な絨毯、そして黄金の調度品や柱が鮮やかに栄えるへレスの部屋は、口の悪い者にいわせれば『下品なほどに豪華な部屋』だった。
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