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「ああ、もう忌々しい」
と金糸を施された朱色のソファーに腰をかけ、心を静めるよう息をついていると、
「あ…あの、ファラオからの伝言を言付かって来ました。帰還祭にはヘレス様もクフ王子とご一緒に出席するようにとのことでして……」
言いにくそうに告げた侍女の言葉が火に油を注ぎ、ヘレスの顔は壁の色同様みるみる真っ赤なった。
「どうして、私が出席しなければならないのですか!」
勢いよく立ち上がり叫んでいると、クスクスと言う笑い声がし、
「――母上、どうされましたか?あなたの声が私の部屋にまで響いていましたよ」
肩までの真っ直ぐな黒髪に、横に切れ長の黒い瞳を持つ、どこか冷たげな印象を与える少年・クフ王子が姿を現した。
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