第一章 ナイルの川岸で

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嫌々来たけれど、来てしまえば楽しい雰囲気。 いつもは神聖な雰囲気のこの広場が嘘みたいに大勢の民衆が溢れかえって、絶えず音楽が流れる陽気なムードに包まれている。 心が弾み出しウキウキしながら歩いていると、すれ違う町の人々は美しいイシスの姿を見ては思わず振り返り、「なんて美しい」と見惚れたように熱い息をついていた。 そんなイシスの姿を見つけた友人達はキャーッと奇声を上げ、駆け寄ってきた。 「イシス、来たのね!」 「まぁ、なんて綺麗なの?素敵よ」 と感激の声を上げる友人達にイシスは戸惑いながらも笑みを返していると、帰還祭を取り仕切る宮殿の侍従が『花束贈呈に選ばれた方は受付まで来てください』と張り上げた大きな声に、顔を向けた。
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