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友人や両親は「ほら、行かないと!」と囃し立て、イシスは「はいはい」と頷きながら受付に向かった。
受付には花束贈呈に選ばれた美しい町娘二人が既に待機していてイシスが「どうも」と会釈すると、彼女達は対抗意識を燃やしたかのように、露骨に横を向いていた。
イシスが、あらら、と苦笑する傍ら受付の侍従が説明を始めた。
「もうすぐネフェル様が空飛ぶ船で帰国されます。船から下りて来た時に花束を渡してください。その後ネフェル様は祭壇に向かいファラオと対面なさいますので、あなた方は花束をお渡しした後は、そのまま解散して頂いて結構です」
段取りを説明し終えたとき、バァンとドラが鳴り、
『偉大なるファラオ、メルサンク第一王妃様、クフ王子様、ヘレス第二王妃様のご登場です!』
と侍従が大きな声を張り上げ、それが合図のように神聖な音楽が流れ出した。
すごい、ファラオとあの二人の奥方が公の場で対峙するなんて珍しいこともあるものね。
他の奥方様方は来ていないのかしら?
イシスは面白半分で、バルコニーに姿を現した王族を遠巻きに眺めた。
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