第一章 ナイルの川岸で

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ファラオはバルコニーに作られた祭壇の上の黄金の椅子に腰をかけ、クフ王子はその隣に、二人の妻はその左右に座っていた。 顔を見合わせようともしない二人の奥方の姿を見てイシスは『あーあ』と顔をしかめ、周囲の民衆たちも失笑していた。 クフ王子の母ヘレス第二王妃は不愉快そうに扇係を睨み、 「暑いわ! もっと仰ぎなさい!」 とヒステリックに命令し、ネフェルの母メルサンクンク第一王妃はそんなヘレスを見て眉をひそめていた。 ……奥方様はさておき新型の空飛ぶ船で帰国するってことだけど、一体どんな船なのかしら? 空を仰ぎながらそんなことを思っていると、遥か上空から巨大な皿のような物体がゆっくり下降して来た。 その得体の知れない物体に民衆はどよめき、イシスは背伸びをする勢いで目を凝らした。
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