第1章 嫌い

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【莉李】 土曜日。 今日は朝からバイト。 休みの日は必ず朝から1日バイトを入れている。 店長はたまには休んでいいよ。と笑うけど休んだところで何をするわけでも無い。 「…おはようございます。」 挨拶をしながら店に入る。 『おはよう。莉李ちゃん。昨日のパンどうだった?』 試作のパンの感想を聞きたいらしい店長。 「……野菜が欲しい感じですかね。」 荷物を置きながら答える。 『野菜かぁ~。玉ねぎかなぁ。明太子にピーマンとか合わないよねぇ。玉ねぎのスライス?きざみ?ん~。どっちがいいかなぁ。』 一人でブツブツ言っている店長をほっといて店のエプロンを着ける。 「…スライス。」 それだけ言って店先に出た。 焼きたてのパンを所定の位置へ並べていく。 休みの日はもう一人のバイト、華はいつも休む。 だから静かでいい。 全てのパンを並べ終えてから、入り口の鍵を開け看板を外に出す。 店に戻れば店長が奥から私を呼ぶ。 レジの少し後ろにある焼きたてのパンを出すカウンターにカップに入れたコーヒーを置いた。 コーヒーというか詳しくはカフェオレ。 その横にトレーに乗せたパン。 『今のうちに食べな。』 店長は休みの日は、いつも朝食にとパンとカフェオレを出してくれるのだ。 カップを手に取り一口飲んで、もう片方の手でパンを取る。 カウンター下に置いている丸い木の椅子に腰掛け、朝食を食べる。 因みにパンは、その日のオススメのパン。 本日のオススメ。で、毎日変わる少し安くするパンなのだ。 多目に作るのだが、すぐに売り切れる。 この店の売りだ。 店頭に並ぶパンがいつもより安く買えるわけだから、それを狙ってくる客は多い。
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