第1章 嫌い

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午後は4時から。 二時間の休憩とか要らないのだが、午後から店に出すパンを焼かないといけないから仕方ない。 エプロンを外しコンビニへ行く。 適当にお昼ご飯を買ってから近くの公園のベンチへ。 天気の良い日はいつもここで。 雨の日は店に戻って食べる。 今日は天気が良いから公園。 小さな子供達が遊ぶのを眺めながらおにぎりを口にする。 ぼぉ~としながら。 お昼を食べ終わると店に戻り、ちょっとしたスペースの休憩室でソファーに横になり少し寝る。 店長に起こされコーヒーを貰いそれを飲んで、エプロンを着け焼きたてのパンを店頭に並べる。 レジに立ちしばらく外を眺めていたら午後一の客が来て、いつもの様に接客をする。 午後からの客は若い人が多い。 まぁ。主婦も多いが。 客が居ないときに焼きたてのパンを並べレジに戻る。 タイミングによっては店長が焼きたてのパンを客の前でどうですか?と勧めていたりもするが。 焼きたてと言うのは魅力的らしく、よく売れる。 外が暗くなった頃には独身の男性だと思うが、次の日の朝食用にパンを買っていく。 誰も聞いていないのに、一人だと朝はパンが楽だから。と笑って言っていく男の人がたまにいるのだ。 店頭のパンも少なくなって来た頃、売れ残りのパンをトレーに纏めて、値段を少し下げる。 それを真ん中の台に乗せる。 パンを乗せるトレーやパンを入れる籠の敷紙を集め片付けにはいる。 すると、店のドアが開くベルの音。 閉店ギリギリで店に入る客も少なくない。 片付けを途中でやめ、トレーに敷紙を乗せて奥のカウンターに置いてからレジに立った。 『これ。ください。』 そう言ってレジカウンターにパンを乗せたトレーが置かれた。 「いらっしゃいませ。」 置かれたパンに視線を向けて1つずつレジをうち袋に入れていたら 『莉李。もうバイト終わる?』 聞き慣れた声にバッと顔を上げると 「…陽次。」 今頃気付いた。 店に入ってきた客は、どうやら陽次だったらしい。
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