第1章

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
春風が、私の頬を掠めた。 暖かいはずのその風は、何故か異常なまでに冷たかった。 「…なん、で…っ」 あぁ、そっか。 私が泣いてるからか。 だから暖かいはずの風が、冷たく感じちゃうんだ。 平日のお昼のバス停。 お昼だからなのか、バス停には私以外の人は居ない。 「分かってた、けどさ」 アイツと私はいつもこうだった。 私が何年も前から片思いしてて。 告白して、フラれて。でも、諦めきれなくて。 自分だけの中に閉じ込めておこうと、過ごしてきて。 笑って、泣いて、悩んで。 最後の答えが、「もっと早く言ってほしかった」? 「そんなの…あんまりだよ」 いつだって好きだった。 いつだって忘れられなかった。 だから、これが最後の思い出だって、告白したのに。 「東京行っちゃう…とか…」 『ごめんな』 さっき聞いた声が、頭の中で反芻して響く。 痛い、痛いよ。 何で、もっと早くに言えなかったんだろう。 飛行機の音が聞こえた気がして、空を見上げた。 青く綺麗な空に、小さく見える真っ白い飛行機。 「…好き、だよ。今でも、」 見えるはずは無い、そう分かってても飛行機に手を振った。 今日は失恋記念日。そして、明日からは別の道を歩む。 “終わりは始まり”そんなどこかで聞いたことある言葉を、アイツが言ってるような気がした。 「バイバイ、また」 “どこかで会おうね” その言葉を口に出す前に、待っていたバスがようやくやってきた。 end
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!