夏の終わりに

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 腕時計を見ると  11時23分だった。  たしか……  11時30分着の終着駅まで  あと少し──  というところで地震が起き  電車が脱線して  3両目の入り口付近に  座っていた  トオルただ1人が  打ち所が悪くて  死んでしまったはず……  直前の駅は過ぎてしまったが  車両を移る時間は  まだ十分にある。 「ねえ、トオル」  彼の方を向いた私は  愕然とした。  私の声にこちらをみる  トオルの向こうに  先程まではいなかったはずの  スーツ姿の若い男が  立っていたのである。 .
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