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※ネタバレ!
――私たち、兄妹には秘密があります。
もちろん、誰にも言えない秘密です。
ただ、その秘密を共有していた兄は…急に姿を消しました。
いつの日か、神隠しだと聞いたことがありました。
その言葉は、私達にはとても縁があります。
いえ、無いと言ってしまえばないのです。
しかし、あると言えばあるのです。
矛盾、ですよね。
私達は、今しっかり生きています。
もちろん兄もそうだと分かります。
そもそも兄が死んでしまったら………。
いえ、何もありませんよ。
私は……。
私は、ある人に会いに来た。
でもやっぱり遅かったんです。
やはり小さな私達には越えられない、大きな壁でした。
「今回もまた、やり直し?」
そんな声が聞こえます。
聞きたくもない、嫌な声。
「私は、今回も…ではなく、最初から変えるつもりなどないのです。何度言わせるのですか。」
「ははっ……の、わりには悲しそうな顔だね?」
「………悪いですかね。」
「いっやー、別にね?僕はさ、チャンスを与えてるんだ…でも…。」
「いいです、将来何が起こるかなんて予想は聞きたくない。変えるつもりもない。私は見守ります。」
「キミとお兄さん、消えちゃうのに?」
「ええ、それがあの人たちの選択です。」
人は自由であるべきだ。
自由に恋をして、自由に将来を育んでいく。
良いじゃないですか、好きですよそう云うの。
「はぁ…ホント…そこは母親譲りと云うか…。」
「貴方のお節介もですよ。」
「ええ…そうかなぁ…?母さんよりはマシだと思うんだけどなー。」
そう言って宙でくるりと一回転してみせる彼。
変な癖ですよね。
「私達が存在しない未来とか、貴方が存在しない未来とかあって当然ですもの。ただの興味でそこの軸に足を踏み入れた私達は、代償があって当然。それが時間ってだけです。」
「……難しい話だね、ホントにさ。」
「そうですね」
そう言ってまた視界はブラックアウトしてゆく。
――今回も、お父さんを助けれなかった。
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