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「葉ちゃん……凜花ね……おひっこしするんだって……」
「っ……」
結婚の話から一週間後のことだった。
そんなはずないと思った。
だって俺達はずっと一緒にいるんだ。
明日も明後日も、この公園で暗くなるまで遊んで、その繰り返しをするんだ。
それでも、子供に選択権はない。
独り立ち出来ないなら親に付いて行くしかない。
「そっか……」
何も言えない。
いくら泣き叫んでも、この事実は変わらない。
「うん……」
「俺、帰るね」
何も考えられなくて、後ろから聞こえる声を無視して俺は家に向かって走った。
それからの数日間、心に穴が空いたように俺は何もせず過ごした。
その女の子も以前のように遊びに誘いに家に来なかった。
会ったところで、何を言ったらいいのかも分からず、どのようにしたらいいのかも分からなかった俺は少し安心していた。
幼かった俺は、そのまま好きな女の子に会うことはなかった。
引っ越しを告げられて一週間後、女の子はどこかへと引っ越して行った。
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