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空の脅威を任された雷属性の魔法使い達はあっという間に魔物の大群を退け、大自然の力を見せ付けることによって人間が魔物より高位であることを証明した。
やがて、四大貴族は五大貴族へと成り立つ。
これはフロール王国国王の提案であった。新たな英雄を国の重鎮として迎えようと言い始めたのだ。
他三国は慎んでその提案を受け入れた。
直ぐに国内で討論が行われ、やがて『雷に連なる代表者を大貴族に迎えるか』という名目で投票が行われた。
結果は貴族も平民も大賛成といつ結果が得られた。四大国家でも同様の結果となった。
だが、それは序盤のみに過ぎなかった。
各国で“平民が突然大貴族になる”という事態が発生してしまったのだ。
身分と同様に属性も重んじられた世の中では雷属性は極めて矮小な属性であり、貴族にはなれなかったからだ。
百年前に四大貴族が設置された当時は貴族身分制が厳しくなかった。そのために平民の成り上がりでも受け入れられたが、四十年前の当時とは違う。
貴族こそ絶対の世の中では、平民の血は穢らわしいものに他ならなかった。
貴族からの反発が起こるも、各国の国王はそれを叱咤して強制的に黙らせる。さらに正規な投票によるものだと正当性を主張した。
納得の得られない結果であったために、現在でも雷の貴族を嫌う伝統的貴族は少なくない。
そこから時代を経て、世の中は現代へと変革を見せ始める。
平民から大貴族になったという事実は平民にとっての誇りであり、それによって貴族文化の地盤は揺らぎ始めた。
平行して内戦・大戦・魔物襲来の三つを乗り越えた世の中は平和になり、実力派の貴族の存在意義さえも薄らぎ始めた。
“平和ボケ”の始まりである。
文明の発達を見せた世の中では利器の開発者や魔法以外の才能を極める者が頭角を現し始めた。
冒頭にも述べたように、“格”の差が縮小したのである。
権力こそ変わらないために威張る者は威張っていたが、“貴族は偉い”という風潮が緩くなったというのは認めざるを得ない。
そして、現在の世の中に至る。
貴族も平民も友人になれる。
運が良ければ平民が貴族に意見を出来る。
さらに運が良ければ身分格差があっても結婚出来る。
それが歴史がもたらした時代の流れだった。
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