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その日は仕事もなく、暇を持て余していた僕は街をふらふらと彷徨っていた。高層マンションが建ち並ぶ住宅地で、『仕事』となりそうなことを探していた。
そんな時にふと見上げたマンションの屋上で何かが光った気がして、僕は肩にかけていた鞄から双眼鏡を取り出してそれを見る。友人がくれたこの双眼鏡は中々に使い勝手がよく、かなり離れた距離でもはっきりと見える優れものだ。その双眼鏡で見たものが彼女だった。
僕は珍しい、と思うと同時に嬉しくなる。
高層マンション、煌びやかなワンピース。そしてなによりも珍しい容姿。彼女を攫えば、高額の身代金を手に入れられるのは確実と言ってもいい。仮に、身代金が無理だとしてもあの容姿だ。裏オークションに出せばいい値段がつくだろう。そういうのが好きな友人に高値で売りつけてやってもいい。
攫わないなんて選択肢はなかった。
もともと僕はその手のプロ。
今更罪悪感なんてもの湧かないし、情だってない。ただ商品の取り引き、売買をするだけの簡単なお仕事。
子供はとてもいい商売道具だ。多少うるさいけれど、それは大人だって同じ。それに、子供の方が物わかりがよくて脅せば黙る。
あぁ、今日はツイてる。
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