ディアデム

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 次の日、なぜか騒がしかった。 「ディアデム様?」  そう言うブルシャの声が。 「昨日の夜に迷い込んだのはあなたですね?」  そうドアの前でいう。 「何のことだ?」 「心当たりあるんだが……」  そう思いドアを開けると。 「昨日の方ですね?」 「は、はい」 「名前は?」 「バス……ブレーズです」 「ブレーズさんですね、結婚しましょう」 「!」 「ディアデム様!」 「だって私は、巫女ですから、巫女は初めてはだかを見られた方と結ばれないと、力を失くしてしまうんです」 「なっ! 見たのですか」 「……はい」  バストンは真っ赤になってそう言った。  ディアデムはそれだけ言って占い場に戻った。  その日、バストンは、王様に呼び出された。 「この、外国の男のくせに、ディアデムのはだかをだな……み、見たなどと」  むせながら王は怒る。  きっと怒り過ぎて冷静でいられないのだろう。 (ああ、なんてことをしてしまったのだろう)  バストンは今になって後悔した。 「ええい、死刑にしてしまえ」  王は怒りがヒートアップしてきたようだ。 「王、外国の者は、ここの国では裁けませんよ」 「く?」  王は悔しそうに言う。 「良いですか? ディアデムは巫女で、ここの世界では一番偉い方なのです。その方と結婚などされる方があなたでは困るんです」  そう秘書が言う。 「誰も近づけないように隠していたのに、ディアデム?」  王はよっぽど、巫女が大事なのだと、見ていてわかった。 『しばらく、ディアデムの様子をみるのでこのことは内密に』  とのことで、バストンは、部屋に軟禁されている。 「昼御飯です」  ブルシャがそう言い運んできた。 「ありがとう」 「いえ」  少し冷たい感じがした。 「何で、怒っているのですか?」 「何で、ですって??!」  ブルシャは取り乱してこう言い出した。 「あのディアデム様が、婚約するのは、本当に困るんです」 「……」 「あなたも巻き込まれて、いい迷惑なのでしょうが、ディアデム様は、この国では、本当に大事な存在なのです」  何も言えなかった。  ブルシャは部屋を出て行った。
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