ディアデム

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「あなたは、充分魅力的です。この方の他にもあなたを好きな方がおられますよ」 「本当ですか?」 「その方は自分で見つけて下さい」  ディアデムがただいい巫女役だけではなく、本当に占い相手の事を考えて言葉を選んでいるのがよくわかった。 (ディアデム)  初めは騒がしい女だと思ったが、頭のいい、良い人なのだと言う事が見ていてわかった。  占いは続き、ディアデムは一人一人に丁寧にアドバイスしている。 「では、今日は終わりです」  そう言い、占い場の奥の部屋に消えた。  女の人達もいなくなり、バストンも恐る恐る奥の部屋に入った。 「ディアデム!」  ディアデムは、台の上で死んだ様に眠っている。 「力を使い果たしたのでしょう、ディアデム様は無理ばかりしますから」  女の人がそう言う。 「ブレーズ……」  かすかに目を開けた。 「あのね、聖杯は勝者に贈る最高の物でしょう? だから、とても素晴らしくて美しい物じゃないといけないと思うの、私は聖杯の巫女だから……」  そこで目をつぶった。 (ディアデムは、巫女であることを本当に大事にしているんだな……)  少し罪悪感を感じた。  しばらくして、ディアデムが目を覚ました。 「ブレーズ?」 「ごめんなさい、ごめんなさい」  そうバストンがつぶやいていた。 「どうしたの?」 「私には国の使命があって、あなたと結婚できないのです。本当に申し訳ない」  そう謝った。 「そうか、ブレーズも私と同じで使命があるんだね」  ディアデムは悲しそうに笑った。 (こんな顔させるつもりじゃなかったのに……) 「ブレーズ、私もあきらめるわけにはいかないの、ごめんね」  ディアデムは台から立ち上がり。 「私も、恋をしたことがなくて、十五年間、婚約者を待っていたの、でも、顔も知らない人なの、私は、巫女だから人の好き嫌いはそれほどひどくはないと思うの……でも……」 「不安なんだな?」 「はい」  ディアデムは、ほっとした顔つきで返事した。 「私、あなたの事割と好きなの、それではだめ?」 「……」 「だめよね、あなたも使命があるのだもの、それでこそ騎士、私の愛した、いえ、私の愛しい人だわ」  とてもディアデムが美しく見えた。
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