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そして、十五年が経ち。
「バストン、今日はお前の誕生日だ」
兄のスティツ・イーグニスがそう呼ぶ。
バストンと呼ばれた青年は、髪が短いので、王子にはとても見えないが、黒髪で背は高い。
それに対して、スティツ・イーグニスは、長い髪の毛で、しかも金髪で、これでもかと言う位、王子にぴったりだ。
「どうした? バストン、そんなのでは、女の子にモテないぞ!」
「はあ、兄上……私には、もう婚約者がいるのですよ、生まれた時から」
「相変わらず誠実だな、では、その女にも好かれなかったらどうする?」
「……」
バストンは黙ってしまった。
「すまん、一番悪いことを言ってしまったな」
兄の無神経さを恨むような目でバストンはスティツの事を見る。
バストンは心の中で。
(何で兄さんは、そんなに完璧何だ?)
自分の生まれを恨む事しか出来なかった。
「バストン、久しぶりに剣の稽古をつけてやるか?」
スティツは嬉しそうにそう言うが、バストンは。
(どうせ、負けるだけだ)
とあきらめているせいか断った。
「バストン、誕生会に出ろよ」
「はい、兄上」
バストンはため息交じりにそう言った。
誕生日とは、王族であるバストンは盛大に祝われるのが普通だ。
しかし、今回は十五歳の成人の祝いがあるため、いつもより、大騒ぎなのである。
元々騒がしいのが嫌いなバストンがため息をつきたくなるほど嫌な事であった。
(はあ、なんで私は王族に生れたのだろう?)
バストンはそればかり考えていた。
庭でパーティーの準備をする、召使たちに。
(せっかく、みんな楽しみにしているんだ。仕方ない、儀式なんて一回きりだろう)
そう自分に言い聞かせた。
誕生日と成人の儀式を兼ねたパーティーは無事開かれた。
「バストン様、おめでとうございます」
年を召した女の人がアフタヌーンドレスで着飾りそう言ってくる。
これは、王族への点数稼ぎだとわかっているバストンは笑顔で。
「ありがとうございます」
と一人一人流したのだった。
「バストン様は、婚約者がいるし、声をかけても玉の輿には乗れないわね」
下品な貴族がそう言い笑う。
(どうせ、親の決めた婚約なんだ)
心の中ではそう思ったが王族は、堪えなければいけない。
そして、その下品な貴族の女は。
「バストン様、おめでとうございます」
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