杖の王子聖杯の姫に会う?

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 その後、ダッシュでそのメイドは消えた。 「杖の王子が来たって本当ですの?」  サフラン姫がそう言う。 「はい、今、会ってきました」 「ブルシャ、どんな人?」  ブルシャと呼ばれた緊張していたメイドは、猫目の背の低いメイドだ。 「はい、とても恰好のいい方で」 「本当?」 「でも、ブルシャの好みの問題かも」  サフラン姫は、何回も鏡に向かってそう言う。 「お父様、お母様」 「サフラン、わかってると思うが頼んだぞ」 「はいはい」  サフランは、メイクをして、バストンの待つ部屋に向かう。 「どんな姫だろうな?」 「美人らしいぞ」 「失礼します」  現れた女は絶世の美女だった。 「お待たせしました。サフラン・ヴァッサーです」 「はい、私は、バス……ブレーズです」 「俺は、ブレ、バストン・イーグニスです」 「えっと、ブレーズさんとバストンさんですよね?」 「「はい」」 「よくわからないのですが、私の婚約者は……どちら?」 「俺です」  ブレーズを見つめるサフラン姫。 「そう、よろしく」  と小さく笑った。 (この女が、私の婚約者)  下品でもなく美しい彼女が、そうならば、名乗っておけばよかったと後悔した。 「では、何の用でしょう」 「……」 「あなた達は分かってらっしゃる? 私との婚約が破綻になった日には杖の国はなくなるのよ、もう少し、私をそうね、敬うべきよ」  サフラン姫は人が変わったようにそう言った。 (やはり名乗らなくて正解だった)  バストンはそう思った。 「はっはい」  ブレーズは、とても小さくなってしまった。 「大体あなたは、体が大きいくせに心は狭いのかしら、私はそう言う人って嫌いなの」  サフラン姫は、いつまでも怒り続けた。  そして、解放されて、別の客間に連れて行かれた。 「こちらのお部屋でお休みください」  さっきのメイドが、やはり緊張しながらそう言う。 「なんだよ、あれは」  ブレーズが大声を出した。 「静かに、あの位で怒るな」 「だってお前の婚約者なんだぜ」 「わかっている、わかっているさ」  バストンは力なくそう言った。 「すまん、お前の方がショックだよな」  十五年待った女があれか……。  バストンは少し悔しくなった。  しかし、王宮では。 「サフラン、結婚が嫌で、情緒不安定になったヒステリックな女は演じられたかい?」 「ええ」
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