やはり野におけ れんげそう

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ウワサはウワサ、そのうち収束する。 「最近、パワースポット現象はどう?」 カウンターで出会ったとき笹本くんに聞くと、 「なんかなくなりました、」 とにこやかだった。 よかったあ。 作戦は成功したようだ。 実は、喫茶ステーションのマスターと新たなウワサをひろめてみた。 先日、図書館長が娘さんのお見合いの験担ぎに、笹本くんに会ったことはウワサとしてひろまっていたので、 それが破談(これは事実)になったのを利用したウワサを考えた。 「最近、笹本くんのパワーが落ちているらしい」 「みんながあまりに触ったり写真をとったりするので吸いとられているようだ」 「パワーが落ちているときは、逆に悪い結果がおきる」 意外に簡単にウワサはつくれる。 「山内さんね、きょうは移動書架のとこで蔵書点検の準備してるよ」 わたしがそう言うと、 「サオリさん、いつもありがとう」 と、ありがたい笑顔を投げかけてくれる。 ああ、この笑顔を保存したい! なんで山内さんは気づかないのかなあ… 院生だからって毎日、図書館に用事があるわけないのに。 健気に愛されてるのに気づかないなんて、ぜいたくな男ね。
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