さくら

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気のすむまで抱き合って、幸の部屋で朝を迎える。 夢と現実の狭間。 至福のまどろみ。 「いいの?」 「はい、気にしないでください」 「はあ、ごめんねー、混乱しちゃって…」 「コーヒーどうぞ」 「ありがとー…」 …誰かの声がする。 夜の余韻を楽しむ間もなく、おれは覚醒を迫られていた。 幸の部屋は1DK。 手前の部屋で話し声がする。 女の人の声? 起きていったら、まずいか… 半身を起こして悩んでいると、 「おはよう」 がらりと戸を引いて、幸が顔を出した。 「おはよ…だれか来てる?」 「相澤さん、コーヒー入れたけどのむ?」 「ああ、おおう、飲む」 「山内さんすみません!お邪魔してます!!」 幸の後ろから相澤先生が顔を出した。 雰囲気がちがう。 いつもひとつに結んでいる髪は下され、青色のパーティドレスを着ていた。 「相澤先生…別人みたいです」 女の人は髪型と服装で印象が変わる。 「ラブホから逃げてきたんですか?」 冗談のつもりだった。 と、言ったら、うそかもしれない。 いつもの仕事オーラがなく、「女性」の匂いがしたのだ。 相澤先生の顔が赤くなる。 やるな、おれ。観察眼がある、とおもっていたら、幸に蹴られた。
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