たけのこ

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バイトが終わると、雅さんの家へ向かった。 図書館長のわけのわからない「娘の見合い」相談のあと、 「寄る」 とメッセージを入れておいた。 ここは部下に文句を言わなければ! インターホンを押すと、「へーい」と雅さんが顔を出す。 「平日にめずらしいね?」 のんきな顔しやがって。 「飯食った?きょう、柳田さんから筍の煮付けもらったんだ」 たけのこ! 「いま旬らしいよ」 玄関から無言。 ソファにどかっと座って、雅さんの飲みかけの缶ビールを飲み干した。 「しゃべれよ」 空いた缶をぼくの手から取りながら、雅さんが口づけを落とす。 「もう一本のむ?」 「…のむ」 あああ、なんか甘えにきてるみたいだ! 自分の言動の幼稚さが情けなくて、ソファに突っ伏した。 冷蔵庫からビールを二本持ってきた雅さんは、ソファの下に背もたれて、ぼくの髪をさわる。 そうしてくれると、たぶん、ぼくは知っている。 雅さんは、これでぼくが甘えていると気づいてないことも、 ぼくは知っている。
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