第1章

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体育館から近い自販機は、部室の裏側にある。 「あれ、マキちゃ…槙田先生じゃね?」 言い直した。 ハチにしては上出来だと思う。 ハチが言ったように自販機にいる槙田先生と、取り囲むように群がる女子が3、4人。 「へー、やっぱモテるんだね」 「おう!そりゃあな!」 「何でアンタがどや顔だよ」 キャッキャしてるとこ申し訳ないけど、私は喉が渇いてる。 「ちょっとごめん」 「すいませ……やだ!西ノ宮くん…!」 案の定赤くなる女子は直ぐに避けてくれたんだけど、アホ面引っ提げた槙田先生がつっ立ってるせいで買えない。 「西ノ宮に蜂谷!部活かな?」 「おう!なっ海里!」 「昨日はどうも。あの、そこ退いてください」 「あ、あぁ」 私たちを交互に見る女子に囲まれて、バナナオレのボタンを押す。 「すごいっ!マッキー、西ノ宮くんと仲良いの!?」 「昨日ってなに!?」 「まぁ、ね。先生そろそろ戻るから、また」 「ちぇー。はあい」 ハチはコーラ。 あんだけ走って炭酸飲める所だけは尊敬してる。 部室に向かう途中、バナナオレがパックから無くなって「プス」という音が鳴ったのを合図に私は振り返った。 「あの、ついてきてますか?」 「え?バレた?」 モテ教師のニコニコ顔。 さっきの女子達ならイチコロだったろうに。 「あと仲良くないんだから、濁すように返事してあの子らに期待持たせないでもらえますか?」 「うんうん」 いや、分かってないでしょ。 この人きっと、興味を持ってないことに対して本当に冷たい。
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