いつか王子様が

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人並み、平凡、普通。 そういった言葉がぴったりで。 街に出れば、どこにでもいそうな類の男だった。 だけど、それなのに。 なぜかいつも違う女の子をつれ回している 不思議な男でもあった。 今となっては、私もその数々の女の一人なんだろう。 だけど、あの頃、出会ってすぐの頃の私は 彼のくれた甘い言葉とキスによって 長い眠りからようやく目を覚ますことができたお姫様なのだと 本気で思った。 彼は、深い海へ沈んだ私をすくいあげてくれるただ唯一の王子様。 だから私は必死でその手をつかんだ。 その彼がまた、私をもっと深く暗い海へと突き落とすとも知らずに。
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