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浮気というビョウキと、彼の巧みな言葉によって
私は何度も何度も突き落とされて。
その度に彼がすくいあげてくれるのを
じっと待つしかできない。
私を助けてくれるのは彼しかいないから。
手が差し伸べられるその瞬間だけを
海の底で、ただひたすらに待ち続ける。
いっそ海の泡になれたら。
そんなことは無理に決まっているけど。
“彼の手と一緒に幸せをつかめたら……”
浅ましくもそんなことを望んでしまう私は
どう足掻いても
あんなに美しく儚い悲劇のヒロインなんてなれやしない。
だけど。
無理だと分かっていても
あの時だけは幸せを願わずにはいられないから。
彼から手を差し伸べられた時だけ
私は世界一のお姫様になれる気がした。
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