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桜なんて全部散っちゃえばいい。
静かに降り続ける雨の中。
足下には、頭上に広がる真っ黒の傘とは対照的な、薄紅色。
わたしはそれをじりじりと踏み潰すようにして
駅からの帰り道を、ゆっくりと歩く。
例年よりも早く咲いた桜は、わたし達の別れに哀しくも美しい色を添えた。
転勤なんて、わたし達の会社では別に珍しいことでも何でもない。
毎年誰かがどこかに転勤になる。
今年はたまたま、その誰かが彼だっただけの話。
たった4ヶ月の交際期間。
それはあまりに短すぎて、二人の将来の話だって、まだまだ遠い未来のことだと笑っていた。
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