第二章 思い通りにいかないのが世の中なんて思いたくないけど-2

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家に帰ると、健治はすぐさまPCに向かい情報を調べ始めた。 ここから近郊のレストラン。料理が美味しく、雰囲気が良く、夜景がきれいなところ。 利用者の評価とにらめっこしながら店を探す。少しでも悪い評価があるところは駄目だ。最高の店を選ばないと。 金に糸目を付けるつもりはなかった。何せ今回のデートは自分の魅力を見せ付ける場なのだから。 自分のアピールポイントは財力だ。俺には容姿も話術もないけれど、財力なら、少なくとも同年代の人間よりは上の筈だ。 だから自分の得意なフィールドで勝負しなきゃいけない。相手に自分の凄さを見せつけられる、そんなデートにしなきゃいけない。 そうやって彼女に、俺が優秀なオスであると認識させてしまえば後は簡単だ。ただ「好きだ、付き合ってくれ」と言えばいい。彼女にそれを拒む理由はない筈だ。 健治はそんな思いだった。だから計画にふさわしい舞台を探していた。 ―やっぱり、ここかな。 様々なWebページを開いていた健治の手が止まる。 個性的な面白そうな店もいくつかあったが、結局は無難に高級ホテル内のレストランにすることにした。 ―やはり、最初はびしっと決めないとな。 そうだ。これで奇をてらった挙句、彼女の嗜好に合わなかったりしたら目も当てられない。まずは王道で行くべきだ。 高級感にしても写真を見る限り申し分なかった。名の知れた一流ホテル。彼女に「俺がこのデートにお金をかけている」と感じさせるにはもってこいだ。 ホテルの予約ページで検索する。残念ながら窓際の席は金曜、土曜の夕方には空いていなかったが、それ以外の曜日ならば大丈夫そうだった。 即座に火曜日、水曜日、木曜日の夜を予約する。今日が日曜日なので、明後日以降だ。平日になってしまうがまぁ良いだろう、健治にとっては毎日が日曜日みたいなものだ。後は彼女の都合さえ聞けばいい。もしダメそうだったら後でキャンセルを入れればいい。 オンライン予約が世の中に出回って便利になった、と思う。 予約の電話をかけるのには結構気を遣うのだ。キャンセルの連絡をするときはなおの事である。それが、今なら予約前に状況を見る事もできるし、キャンセルもボタン一つで済むのだった。 ―俺のような人間にとっては、随分いい時代になったものだな。
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