第二章 思い通りにいかないのが世の中なんて思いたくないけど-2

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これまで面白くもなかった自分の人生に、ようやく転機が訪れたのかもしれない。神様がうだつの上がらない自分を見かねて、手を差し伸べてくれたのかもしれない。そんな幸せな思考回路まで生まれてくる。 健治は昼間に見た亜紀の顔を思い出す。ふわっとした髪、少し太めに描かれた眉、僅かにブラウンのかかった澄んだ瞳。細く高めの、形の良い鼻。 そうやって彼女の姿を一つ一つ思い出していく。学生時代にはただ眺めているだけだった、といっても過言ではない。何せ自分とは接点もなく、釣り合いもしないと思っていたからだ。いや、今でも自分とは釣り合わないくらいにいい女だと思う。 単なる同期の一人としての繋がりしかなく、もう会う事もないと思っていた彼女。 だが、何の因果か、今は健治の手の届きそうな所へと降りてきてくれていて、ひょっとしたら健治のものに出来るかも知れないのだ。 彼女の柔らかそうな唇が思い出された。 ―彼女とキスしたら、どんな感じがするんだろう。 中野亜紀がどうやら彼氏を募集中で、自分のデートの誘いを受けてくれている。そんな状況に健治はすっかり舞い上がっていた。もう成功したも同然、そんな気分にもなっていた。 ―キスしたら、その先は、やっぱり― 健治の妄想はそのまま中野亜紀の身体へと降りていく。残念ながら細部を思い出せるほどじっくりと見ていた訳ではないが、そこは想像で補う。 大きすぎず小さすぎずのバスト、胸元から見えた健康的な肌の色。 ―彼女のブラウスを、ゆっくりと肩から脱がせていく。 徐々に露わになる首筋から肩のライン。白い肌。細い鎖骨。恥じらうように身じろぐ仕草。 俺はに彼女の肩、そして首筋に優しく口づけする。耳にかかる彼女の吐息が熱い。顔を上げ見つめると、潤んだ瞳がそこにあった。俺はもう一度彼女にキスを― そんな事を考えていると悶々としてきてどうにかなってしまいそうだった。ベッドの上に倒れこみ、布団に顔をうずめてうひょう、と叫びながら、そのまま布団を抱えてゴロゴロと転がりまわる。 ―彼女はもうメールを見てくれただろうか。
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